本作品では、大好きなばあばを病気のために65歳で亡くしてしまった壮一朗さん自身の実体験と、『クララ先生、さようなら』に登場する主人公ユリウス(オーストリアの国民学校4年生)と学級の友だちの物語に学んだことが綴られています。
働きながら一生懸命弟と自分を育ててくれたばあばに対して、壮一朗さんは「やってもらったことに対して、やってあげられたことがあまりに少なすぎる」「悲しくてつらくて、泣いても泣いても気持ちの整理がつかない」という想いを抱えています。千羽鶴を折るも、全てが完成する前に亡くなってしまったばあば。壮一朗さんは「病院のルールをやぶってでも会いに行って抱きしめてあげたかった」「『大好きだよ、ありがとう』と伝えたかった」と深く悔やみます。。
『クララ先生、さようなら』はユリウスと学級の友だちが、担任のクララ先生の病(「おなかのモンスター」)とやがて訪れる死を受けとめ、心からの感謝で見送る物語です。この物語との対話を通じて、壮一朗さんは大切なかけがえのない人との別れ、当たり前に続くと思われている毎日が奇跡のような日々であることを知り「一日一日を、一しゅん一しゅんを、生きていきたい(略)、ばあばには毎日こう伝えたい。『ばあば、今日もありがとう。ぼくは今日も大切な人を大切に生きます』」と締めくくっています。誰にでも訪れる病や老い、死と残される者がどう向き合うかは非常に難しい課題ですが、身近な体験と物語の世界を通して、生きることの大切さ、死や病と出会う意味を考察した素晴らしい作品です。
(課題図書『クララ先生、さようなら』 ラヘル・ファン・コーイ 作 石川素子 訳 徳間書店)
|